債務整理における弁護士報酬の規定
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債務整理における弁護士報酬の規定
債務整理における弁護士報酬のトラブルの多発に日弁連が重い腰を上げ規定を設け平成23年4月1日から施行されました。しかし、罰則を設けた規定にも関わらず未だに曖昧な表現で高額報酬を請求したり、 二重請求と思われる報酬を請求しているところが有るようです。ネット上での確認ですので、場合によっては既に是正しているもののネットの更新を怠っているだけかもしれませんが、業とするものは極めて重要部分に変更が有った場合は直ちに告知する義務が有るわけで、ホームページの更新を「外注に任せていた」とか「失念していた」という言訳は通用しません。
以下に日弁連の「債務整理事件処理の規律を定める規定」及び「同施行規則」の概要を示します。
なお、悪質な弁護士報酬の計算方法及び高額請求の例は後述してありますので参考にして下さい
■「債務整理事件処理の規律を定める規定」概要 |
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目的(第1条) 債務整理事件が多量に生じている状況において、弁護士が遵守すべき事項を定めるとともに、主として過払金返還請求事件における弁護士報酬の額を適正化し、弁護士に対する国民の信頼の確保及び依頼者の利益の擁護を図ることを目的とする。面談の義務(第3条) 債務整理事件を受任するに当たっては受任予定の弁護士(複数で受任又は弁護士法人にあってはそのうちの一人で可)が、当該債務者と面談して必要事項を聴取しなければならない。 弁護士費用の説明義務(第5条)
一部受任の排除(第8条二項)
報酬金の上限(第13~15条及び施行規則) (いずれも消費税を含まず) 報告の義務(第17条各項)
業務広告(第18条) |
悪質な弁護士報酬の例
なお、この規定が施行された後も、平成24年7月頃まで、過払金の報酬金で「50万円までの回収金については40%」という高額な金額をネット上で表示していた弁護士事務所もありました。ただ。現在でも「債務整理事件処理の規律を定める規定」の第5条に違反するような曖昧な表現で広告を行ったり、第15条を都合の良いように解釈して請求しているケースがあります。
以下にその例と問題点を示します。
■過払金回収後に減額報酬と過払金回収報酬を請求するケース |
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例えば、 弁護士に依頼する前に3社に対して、契約上の残高が100万円あったが、借入当初から利息制限法所定の利率で引き直し計算を行ったところ60万円の過払い金が発生していたが、50万円で和解し返還を受けたケース 【条件】 訴訟に依らず任意交渉で解決した。 弁護士報酬の取り決めは、基本(解決)報酬金1社21,000円 減額報酬金10.5%、過払金報酬金21%この場合、常識的には、 基本報酬 21,000円×3=63,000円 減額分 1,000,000円×10.5%=105,000円 過払金報酬金 500,000円×21%=105,000円 合計 273,000円 となるはずですが、一部の弁護士は 基本報酬 21,000円×3=63,000円 減額分 1,500,000円×10.5%=157,500円 過払金報酬金 500,000円×21%=105,000円 合計 325,500円 として請求してきます。 |
【問題点】
まず、このケースの場合、日弁連の「債務整理事件処理の規律を定める規定」の第13~15条に違反していないのか、ということが考えられますが、計算方式を細かく規定していないので解釈は分かれると思います。しかし、法律家以外の一般人からすれば、重複して請求しているとしか解釈できません。
また、契約上の残高が200万円であって、過払金が100万円だった場合は、
常識的な弁護士報酬は
基本報酬 21,000円×3=63,000円
減額分 2,000,000円×10.5%=210,000円
過払金報酬金 1,000,000円×21%=210,000円
合計 483,000円
ですが、悪質な弁護士は
基本報酬 21,000円×3=63,000円
減額分 3,000,000円×10.5%=315,000円
過払金報酬金 1,000,000円×21%=210,000円
合計 588,000円
となり、その差は実に10万円を超えます。
弁護士から費用の説明を受ける場合は経済的利益に対する割合だけでなく根拠、計算式も良く聞いてください。
なお、債務整理関係の弁護士報酬は弁護士1(法律)事務所によって大きな格差が出てきています。過払い金回収における弁護士報酬も10%程度のところもありますので、よく調べて依頼した方が良いでしょう。別章で説明した通り、弁護士報酬だけで依頼先を決めるというわけにもいきませんので、他の要因も含めて判断してください。