認知症になったときの遺産分割や契約問題

認知症で契約が無効になる危険性と解決方法

契約の効力が左右される認知症と判断能力

認知症のイメージ画像認知症による判断能力の低下は、契約行為において非常に重要なポイントとなります。契約はお互いがその内容を理解し、同意することが前提です。しかし、認知症が進行すると、契約の内容やその影響を正しく理解することが難しくなり、法的には契約が無効と判断される可能性が生じます。たとえば、不動産の売買や財産の譲渡契約において、当事者に判断能力が欠けていると認められれば、契約が成立しない、または無効とされるケースがあります。このような場面で、認知症患者とその家族が直面する問題には注意が必要です。

契約が無効と判断されるケースの具体例

認知症による契約の無効事例は多岐にわたります。例えば、不動産売買契約を締結したものの、後日売主が認知症であり契約時に判断能力が十分でなかったと判明した場合、その契約は無効になる可能性があります。同様に、預金の解約や保険契約の締結でも、判断能力が欠如している状況下では効力が否定されることがあります。また、一部では認知症を利用する形で高額商品を購入させる悪徳商法も存在し、後に契約が無効とされるケースもあります。家族や周囲の人々がこうした事態に早く気付くことが大切です。

認知症高齢者への消費者被害の実情

認知症高齢者は、悪徳商法や詐欺といった消費者被害のリスクが高い状況に置かれています。認知症により判断能力が低下すると、不必要に高額な商品やサービスを契約してしまうケースが少なくありません。例えば、訪問販売で高額な日用品を契約させられる、電話勧誘で不要な出費をさせられるといった事例が多く報告されています。このような被害において契約が無効と認められる場合もありますが、解決には時間や労力がかかることが少なくありません。弁護士など専門家への相談を早めに行い、法的対処を検討することが必要です。また、家族や周囲の人が日頃から注意し、被害を未然に防ぐ取り組みも非常に重要です。

契約が無効になることで生じる問題点

財産管理や相続手続きへの影響

認知症が原因で契約が無効と判断されると、財産管理や相続手続きに大きな混乱が生じることがあります。特に、認知症の親が財産の売却や管理を行おうとする場合、判断能力が認められないとその契約が無効となり、資産の運用や維持が滞ることがあるのです。また、相続手続きの際に認知症の相続人がいる場合、遺産分割協議を行うことが難しくなります。遺産分割の合意には全相続人の同意が必要ですが、認知症によって判断能力が欠けている場合、この同意が得られず手続きが進まないケースもあります。そのため、適切な財産管理手法を早めに検討することが重要です。

家族間のトラブルの発生リスク

認知症を持つ親や相続人をめぐり、家族間で意見が対立することは少なくありません。例えば、認知症の親が資産の使い道について曖昧な意思表示しかできない場合、兄弟間で資産の管理方法や生活費の負担について争いが起きることがあります。また、親が過去に行った契約行為や贈与が無効と判断された場合、それを巡って不信感が募ることもあります。こういった感情の軋轢は、家族間の信頼関係を損なう恐れがあるため、早期に家族全員で話し合いや財産管理方法の検討を行うことが欠かせません。

第三者との契約履行上の課題

認知症によって契約が無効になると、第三者との間で契約履行が困難になる場合があります。たとえば、認知症の高齢者が不動産を売却しようとした際や、預金を引き出そうとした際に、その判断能力が疑問視されると、契約自体が成立しない、または無効と扱われる可能性があるのです。さらに、過去に認知症を発症していた可能性が指摘された場合、取引相手から契約が取り消されるリスクもあります。このような状況は、取引先や業者との信頼関係を損なう要因になり、その後の取引や契約環境にも影響を与えることがあります。弁護士などの専門家と相談しながら、こうしたリスクに備えることが必要です。

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