争訟
「争訟(そうしょう)」とは、法律上の利害関係をめぐって当事者間に生じる対立や紛争のうち、裁判所などの第三者機関による法的な解決が想定されるような性質の争いを指します。これは、単なる意見の対立や感情的なもつれではなく、法的な権利義務に関わる争いである点に特徴があります。
一方、「訴訟」は、争訟のうちでも、実際に裁判所に訴えが提起され、法的判断を求める手続に進んだ段階を指します。つまり、争訟が裁判という制度の中に組み込まれた状態であり、具体的な当事者がいて、請求や主張がなされ、判決等によって最終的な解決が図られるものです。訴訟には民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟などがあります。
これに対して稀に見受けられる「争訴(そうそ)」は、法律用語としてはあまり一般的に用いられないか、あるいは「争訟」と「訴訟」を混同した表現であることが多く、明確な定義や制度上の区別は通常されていません。そのため、厳密な議論においては「争訟」や「訴訟」といった用語を正確に使うことが重要です。
さらに、「紛争(ふんそう)」とは、「争訟」よりもさらに広い意味を持ちます。紛争は法的なものに限らず、事実上の対立や意見の不一致、利害の衝突といったもの全般を含み、必ずしも法的な争いである必要はありません。たとえば、隣人との境界トラブルや企業間の商慣行をめぐる対立なども、当初は法的な枠組みにのらない単なる「紛争」として存在することがありますが、それが法的解決を要する段階に進むと「争訟」となり、さらに裁判に至れば「訴訟」となります。
このように、「紛争」はもっとも広い概念で、「争訟」はそのうち法的解決が求められるもの、そして「訴訟」は裁判という手続に入ったもの、と整理することができます。
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