免責決定
破産手続きにおける「免責決定」とは、破産者が債務を返済する責任を法律上免除されることを意味し、経済的な再出発を可能にする制度です。免責が認められるには、破産者が誠実に手続を進め、法律上定められた免責不許可事由――たとえば浪費や賭博による過大な債務の負担、帳簿の隠匿、不正な財産処分など――がないこと、あるいはそれらがあっても裁判所が「裁量免責」を相当と判断することが条件となります。免責決定が確定すれば、原則として破産者は破産手続開始前に生じた債務の支払義務を免れ、それ以降の返済を強制されることはなくなります。ただし、税金、養育費、故意による不法行為に基づく損害賠償請求権など、一部の債務については免責の対象外とされています。このように、免責決定は破産者にとって生活の立て直しを図る重要な機会となる一方で、手続の誠実さや社会的責任も問われる制度です。
裁判所が相当と判断する「裁量免責」は、破産手続において免責不許可事由が存在する場合であっても、裁判所の判断によって例外的に免責を認める制度を指します。これは、破産法第253条2項に基づくもので、たとえば浪費やギャンブルによる債務の増大、財産の隠匿、不誠実な帳簿管理といった免責不許可事由があるにもかかわらず、破産者が反省している、被害弁済に努めている、今後の更生が見込まれるといった事情が認められる場合に、裁判所が「免責を相当と認める」ことで、免責を与えるものです。
この制度の趣旨は、単に過去の過ちを理由に経済的再出発の機会を一律に否定するのではなく、破産者のその後の態度や事情を総合的に考慮して、再スタートの道を開く柔軟な対応を可能にする点にあります。つまり、「裁量免責」は、法律の建前と人間的な配慮を調和させる仕組みともいえます。
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