黙秘権

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黙秘権とは、刑事手続きにおいて被疑者や被告人が自己に不利益な供述を強制されない権利のことを指し、日本国憲法第38条にその根拠があります。この権利は、「何も話さない自由」を保障するものであり、取り調べや法廷において質問に対して答えないことができるという基本的人権の一つです。黙秘することによって不利な推論をされてはならず、たとえ何も答えなかったとしても、それを理由に有罪とみなすことは許されません。

この権利が保障されている背景には、自白の強要や不当な取り調べから個人を守るという目的があります。特に日本の刑事司法においては、長時間の取り調べや密室での聴取が問題視されてきた経緯があり、黙秘権の存在はそうした圧力から個人の自由と権利を守る重要な手段となっています。また、黙秘権を行使するかどうかは本人の自由であり、供述することによって無罪を証明しようとすることも可能ですが、その判断は慎重に行う必要があります。

したがって、黙秘権は単なる「話さない権利」にとどまらず、無罪推定の原則や適正手続の保障と深く結びついた重要な制度であり、刑事司法の根幹を支える基本的な権利の一つなのです。

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