証拠の非公開請求
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証拠の非公開請求とは、刑事裁判において検察側が、ある証拠について被告人側に開示することを拒む、もしくは制限するよう裁判所に求める手続きのことです。通常、刑事裁判では「証拠開示制度」に基づき、検察が保有する証拠は原則として弁護側に開示されるべきものとされています。これは、公正な裁判を実現し、被告人が十分な防御を行えるようにするために不可欠です。しかし、証拠の中には、開示することによって国家機密や捜査機関の情報源の保護、人の生命や身体の安全、今後の捜査への支障などに関わると判断されるものもあります。そうした場合に、検察は「この証拠は開示すべきでない」として非公開(開示制限)の請求を行い、裁判所がその是非を判断します。
例えば、共犯者の供述調書に記載された情報が、協力者の身元を明らかにする可能性がある場合、その調書の全部または一部について非公開請求がなされることがあります。裁判所は、その証拠が弁護側の防御にとってどの程度重要か、公開することによってどれほどの具体的な危険や不利益が生じるかなどを総合的に判断し、非公開請求を認めるかどうかを決定します。このような制度は、捜査機関の機能を保護する一方で、被告人の防御権を制限する可能性もあるため、極めて慎重な運用が求められています。非公開請求が過剰に認められると、冤罪を防ぐための証拠が弁護側に渡らず、公正な裁判が損なわれる危険性があるため、その妥当性がしばしば議論の的となります。
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