弁護士に依頼した場合の費用

目次

弁護士費用の確認方法

弁護士に事案を依頼した場合、弁護士に支払う費用はどの位掛かるのか、というのは依頼する上で極めて大きなウェートを占めます。弁護士費用については、2004.4.1以降弁護士会として費用を拘束することが出来なくなりましたが、ほとんどの場合略横並びで、しかも高止まりです。ホームページを開設している弁護士の場合は、費用についてもホームページで公開していますので調べることが出来ますが、ホームページを開設していない弁護士の場合は、面談時にしか確認が出来ません。

 

なお、弁護士の費用については、日弁連の「弁護士の報酬に関する規定」の二条に「弁護士の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なもので無ければならない。」と定めていますが、経済的利益に関する解釈がまちまちであったり、また、過払い金返還請求等では、大部分の貸金業者で、変換請求後1~2回の交渉で返金に関する合意に至るところも有りますので、この様な簡易な事案でさえ20~24%の報酬を一律で要求するのは、貸金業者と同等に暴利を貪っていると言わざるを得ません。

 

弁護士費用については、下記の項目を把握した上で別頁の「法律相談時の心掛け」も確認して弁護士との交渉に当たってください。特に、費用に含まれていると思っていたのに別途に実費として請求されたり、外注費用を請求されることもあります。なお、関西、特に大阪では、百貨店でも値切り交渉をする「値切りの文化」が有りますので、弁護士に費用の減額交渉をする方も多いと思われますが、それ以外の地域でも是非弁護士に相談してみてください。但し、全て事件が解決してからの値切り交渉はルール違反ですし、減額金額も端数免除程度なのでお勧めできません。

 

なお、タイムチャージ性の弁護士費用も有りますが、一般民事案件ではほとんど採用されていませんので説明は省略致します。

 

弁護士費用の項目

弁護士に相談及び亊案処理を依頼した場合、費用は大きく分けて弁護士に支払う報酬と他に実費が掛かりますが、詳細は次の通りです。

■弁護士費用

法律相談料

時間制で30分当たり5,250円程度が一般的ですが、相談内容によっては無料の場合もあります。
手数料 一般に争いの無い、契約書や遺言書の作成、遺言執行等の場合に発生いたします。
事務手数料 依頼する案件1件につき21,000~55,000円の手数料を請求される場合があります。なお、債務整理等の場合は1社当たり上記金額を請求される場合も有ります。
基本報酬 事務手数料と同じ目的・金額で請求される場合がありますが、事務手数料と重複して請求されることがあります
着手金 弁護士報酬のうち、事件の依頼をする時に支払う金額です。弁護士費用の前払い金では有りませんし、所謂手付金でも有りません。
報酬金 事件の処理が完結した場合に成功の程度に応じて支払う報酬です。
顧問料 顧問契約を行った際に支払います。
日当 弁護士を口頭弁論、出張等で拘束した場合に支払う費用です。
■実費
収入印紙代 訴訟を提起した場合の裁判所への手数料は印紙で支払います。また、契約書等を作成した場合には、印紙税法に基づく印紙の貼付が必要です。なお、相手方から訴えられた場合の負担は、訴えた側が負担致しますが、敗訴した場合は負担を請求されます。
郵便切手代 相手方との連絡及び提訴した場合の裁判所からの当事者への連絡用の切手が必要です。相手を訴えた場合は、予め裁判所で定めた額・種類の切手を納めます。しかし、印紙同様に訴えられた場合は予め納める必要は有りませんが、敗訴した場合は請求される場合があります。
交通費 弁護士の出廷等の出張に伴う交通費です。出張が発生する場合は、交通手段に依っても大きく違ってきますので、遠隔地の訴訟を依頼する場合は予め確認しておいた方が無難です。
通信費 相手方との連絡・交渉等の費用です。
宿泊料 ほとんど発生致しませんが、弁護士が遠隔地に出張し宿泊を伴った場合に必要です。
保証金・供託金 仮差押・仮処分、仮釈放並びに強制執行の停止を求めて法手続きを起こした場合に担保として拠出が求められます。事件の内容によって20~80%になります。
外注費 過払い金引き直し計算、住民票・戸籍謄本・登記簿謄本(登記事項証明書を含む)の取得をアウトソーイングした費用です。予想以上に費用が嵩み敬遠すべき弁護士事務所に該当いたします。

 

着手金・報酬の算定根拠

着手金及び報酬金の根拠となる経済的利益は、解釈によって大きく違ってきます。悪質な弁護士の高額報酬請求がなされる理由がここにあります。事案毎の経済的利益の算定基準を下記に列記いたしますので、弁護士との契約に先立ちしっかり確認する様にして下さい。また、経済的利益について「着手金」と「報酬金」とでは意味合いが違ってきますし、算定基準の基となる金額も違ってきます。

 

着手金

相手に請求する場合

相手に金銭の給付を求める場合は、請求金額が経済的利益の額になります。つまり、損害賠償金として
「2,000万円支払え」と言う場合は、2,000万円を経済的利益の額として着手金を支払うことが一般的です。
しかし、相手方が、500万円なら払ってもいい、と言う返事をしてきていたが納得せずに相手に請求したとすれば、
経済的利益の額は1,500万円と解釈することもできます。弁護士によっては、後者の金額で応じてくれますが、
極めて稀です。

 

相手から請求された場合

逆に相手から「2,000万円を支払え」との請求を受けた場合も2,000万円が経済的利益の額になります。この
場合も、「500万円だったら支払っても良い」と相手方に返事をしていたものの相手方が納得せずに請求してきた
場合があったとしたら、経済的利益の額は1,500万円と解釈することもできます。

 

報酬金

相手に請求する場合

着手金の場合と同じく、2,000万円の請求をしたところ1,000万円で和解が成立した場合は、経済的利益の額は
1,000万円ですので1,000万円に対して弁護士への報酬金を支払います。しかし、相手方が500万円の支払い
意思を表示していた場合は、和解金額から支払い表示金額の500万円を差し引いた500万円が経済的利益の額
と解釈することが出来ます。

 

相手から請求された場合

相手に請求した場合と同じく、2,000万円の請求を受け1,000万円で和解した場合は、一般的には1,000万円
が経済的利益の額となりますが、500万円の支払い意思を表示していた場合は、前記同様に和解金額から支払
い表示金額の500万円を差し引いた500万円が経済的利益の額と解釈することも出来ます。

 

着手金・報酬金の区別が無い場合

最近、債務整理及び過払い金の請求事案で着手金無しで報酬金のみで処理を行う弁護士事務所が有りますが、この場合の経済的利益についても解釈がまちまちです。安い弁護士事務所と高い弁護士事務所では3倍以上の違いが出てきますので注意が必要です。
例えば、貸金業者に300万円の債務を負担していたところ、取引履歴の開示を求め利息制限法の制限利率で引き直し計算を行ったところ、400万円の過払い金があり350万円を回収した事案で・・・
①経済的利益を過払い金回収額の350万円だけとして報酬金を11.0%計算する場合。
②引き直し計算以前の債務300万円を減額分として11.0%程度、及び過払い金回収額の350万円に対して22%の報酬を請求される場合が有ります。
①と②とでは支払う弁護士報酬が大きく違ってきますので注意が必要です。
さらに、現在支払い中の債務整理の場合は、着手金22,000円のみで報酬金無しの弁護士事務所から、着手金55,000円+減額金額の11.0%の成功報酬のところがあります。この場合、20倍以上の差が発生するケースもあると思われます。

 

なお、話が少々脱線しますが、相手方と任意交渉で和解したり、訴訟上の和解・判決が得られた場合は、その段階で報酬金を支払いますが、回収がされたということにはなりません。特に、分割返済で和解したものの、すぐに不履行されたというような場合は弁護士費用だけが先に発生しほとんど回収が出来ず大赤字ということになりますので注意が必要です。満額で判決・分割返済を求めるか、減額して一括返済を認めるか、という選択肢があった場合、減額しても一括返済を選んだ方が結局得をするということもあり得ます。争いの相手方の資産状況、支払能力を見極めて判断する方が望ましいといえます。

 

弁護士費用が捻出出来ない場合

弁護士費用を支払うことが困難な場合は、一定の条件下で「全国どこでも法による紛争の解決に必要な情報やサービスを受けられる社会の実現を目指して制定された「総合法律支援法」に基づく民事法律扶助制度が有ります。

 

民事法律扶助制度は、民事事件や家事事件などで勝つ見込みがあるにも関わらず、支払い費用が無いために法の保護を受けられない人のために、無料で法律相談に応じたり、弁護士等を紹介し、裁判に掛かる費用を一時的に立て替えてくれる制度で、立て替えられた費用は、原則として分割返済により全額返還しなければなりません。民事法律扶助制度の窓口は法テラスです。法テラスの所在地はこちらから確認できます。

 

また、刑事事件の場合は、貧困なために私選弁護人を選任できない被告人及び一定範囲の被疑者について国選弁護人制度が有ります。被告人または一定の範囲の被疑者から請求がなされ、裁判所が国選弁護人を付けることを決定した場合は、裁判所から法テラスに国選弁護人の候補の要請がなされます。これに応じて、法テラスが裁判所に候補の弁護士を通知し、裁判所が国選弁護士に選任致します。